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「夢の百姓「正しい野菜づくり」で大儲けした男」横森正樹

ひょんなことから著者の横森さんのことを耳にしたので、ネットで名前を検索すると過去に本を上梓されていることがわかりました。

農家のなかには、農業は「ライフスタイル」の一種として考えている人が多く、仕事として利益や儲けは追求しなくてもいいんじゃない?という空気感が少なからずあるように感じます。

横森さんの還暦記念に上梓されたというこの本、タイトルからも分かるように「儲け」にフォーカスした内容となっており、儲け仕組みや現在に至るまでの苦難が記述されています。個人的に印象に残ったことをメモしておきます。

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土づくりを重視した農業

作物は自分が成長するために、土から莫大なエネルギーを吸収する。だから、毎年作物を育てるためには、使っただけのエネルギーに見合う栄養分を土に与えてやらないといけないことになる。

野菜を食べるのは私たち人間なので、人間が土に栄養を戻してやらなければいけないのである。(p27) 

 聞いてみれば当たり前のことですが、「人間が土に栄養を戻してやらなければいけない」という表現はすごく響きます。
栄養を「入れる」ではなく、「戻す」。この言葉に横森さんの農業に対しての観念が凝縮されているような気がします。

科学的な解説は本書ではないものの、微量要素を意識した農業を実践されていることも文面から見て取れます。

 

生産と流通が直結するシステム作り

農協出荷を離れて、自前で販売を行う生産者が増えてきた時に、横森さん個人の紹介で生産者と流通業者のマッチングを行ってきた。

しかし、その規模が年々大きくなるにつれ、法人組織として運営していく必要性を実感し、生産者と流通業者を取り持つ「信州がんこ村」の設立に舵を切った、ということのようです。

いまの農産物流通の一番の問題点は、生産者は作りっぱなし、流通業者はい売りっぱなし。お互いの協力もなければ、 情報交換もない。それでいて「売れない。売れない」と悩んでいるのである。だから、生産者、卸売業者、流通業者が互いに協力し合った上で、それぞれの仕事に専念できる仕組みづくりをしたいと思ったのである。(p197)

法人化にあたっては、大手総合商社の丸紅との交渉(丸紅の出資は途中で丸紅の意向で断念)やスポンサー探しに奔走していたようで、この辺は長野の立地も手伝ってとても苦労されたのではないかと察します。

また、自分が本書で最も印象的だったのは、新規スーパーとの付き合いを始める場面。
横森さんが文字通り「代弁者」となり生産者とスーパーの間を取り持つのですが、横森さんをはじめ、がんこ村の生産者では契約出荷分で手一杯という状況で、

「がんこ村商品は契約分しか作っていないので、いますぐというのは無理。私の仲間が、立派な商品を作ろうと努力している。それまでは一級品が出せないかもしれない。自然が相手の仕事だから、予定の数量を出せないこともある。彼らが素晴らしい商品を作るまでには5年くらいはかかる。農家が育つまでには店側にも応援してほしい。いまは少し未熟だが待って欲しい。」 と率直に話をする。 (p208)

 ここまで率直に話をするというのはなかなかできることではないと思います。
適当に繕って契約を結ぼうとするのではなく、本音をきちんと伝え、相手がネガティブな反応を示しそうなことも包み隠さず話をする。

この姿勢は自分がこれから農業をするなかで、肝に命じておきたいと感じました。

 

印象に残った箇所は他にもありますが(アメリカでの農業の話など)、全体を通して文章が分かりやすくスッと読める本だったと感じました。

夢の百姓―「正しい野菜づくり」で大儲けした男